ロープアクセス技術とは、ロープを巧みに操ることにより、あらゆる難所・高所に安全かつ、いともたやすくアクセスする(たどりつく)技術のことです。 従来、難所・高所での作業は、大掛かりな重機や仮設足場を、コストをかけあるいは安全上のリスクを覚悟で使わざるを得ないことも多く、作業自体をあきらめることも少なくありませんでした。 とくに難所・高所での老朽化調査や健全度診断などの調査作業は、コスト等の制約が厳しく、間接的手段である遠望・遠隔調査手法ですませざるを得ないことがほとんどでした。 ロープアクセス技術はこれらの問題を解決し、難所・高所での安全かつ低コストな作業を実現した点で画期的な技術といえます。
ロープアクセス技術はもともと、SRT技術という洞くつ探検用に欧米で考案・発展してきた技術を改良したもので、ロープを伝って登高(とこう、とうこう)・下降やトラバース(横方向への移動)などを安全、かつ容易・迅速・確実にこなします。 ・・・・・・・ちなみに、欧米で洞くつ探検が発展した理由は、日本とは比較にならない魅力的な洞くつ群の存在が大きいです。 また、ロープアクセス技術やSRT技術は、岩登りに使うロッククライミング技術とは別物で、ロープなどの器材も異なります。・・・・・・・ロープアクセス技術はSRT技術が生まれた欧米などでは、建設関係の業務などで、以前からごく一般的に使われているようですが、日本においても近年、;建設関係を主体に様々な分野で活用されはじめています。
ロープアクセス技術の日本での歴史は浅く、本格的に実用化され始めたのは90年代中頃で、きっかけは、当時相次いだ落石・岩盤崩壊事故をうけての、岩壁を岩盤の専門家が近接観察する岩壁登攀(とうはん)調査へのニーズの高まりでした。 岩壁登攀調査はその後、より広義な名称である“ロッククライミング調査”(“ロープアクセス調査”も同義)として、岩壁だけでなくあらゆる難所・高所での、各分野の調査専門家(技術者、エンジニア)が近接観察する調査業務へと活用の幅が急速にひろがりました。 同時に、専門的な調査作業を伴わない比較的単純な作業は、“ロープアクセス作業”として実施されるようになり、ロープアクセス技術を身につけた作業員(専門技術員、テクニシャン)が担当しています。
ロープアクセス技術の急速な普及の要因としては、老朽化して何らかの対策工が必要な構造物が急増している点と、社会情勢的に新たな構造物に更新する経済的余裕がなく、コスト的に有利な対処法が望まれている点などがあげられます。 逆に普及を妨げている要因としては、「危険な作業である」というイメージが大きいですが、これについてもこれまで国内では事故例が無く、ロープアクセス技術の先進国といえる欧米などでも事故例は少ないらしいので今後の普及の大きな障害とはなりません。 事故例が少ない理由は、技術自体が安全を最優先しているうえに、徹底した安全管理がなされているからと考えられ、通常のスポーツとしてのロッククライミングの危険なイメージとは全く異なります。 とはいえ、ロープアクセス技術の今後の普及においては、墜落等の労働災害をいかに防止するかが課題になります。
ロープアクセス技術の安全な理由は、スポーツや趣味として岩登りをするためのロッククライミング技術(正確にはアルパインクライミング技術)とくらべてみると、わかりやすいです。 ロープアクセス技術の安全である最大の理由は、テンションのかかった(つまり、張った状態の)ロープに常に確保されている点にあり、墜落したくても物理的に出来ない状態が作業の開始から終了まで維持されています。 さらに、ロープの切断などによりテンションが抜ける可能性をなくするために何重にも安全策を講じています。 何重もの安全策の一例としては、複数の支点確保、ローププロテクターの活用、リビレイやディビエーションなどのロープ技術による荷重の架け替え・分散などがあげられます。 一方アルパインクライミング技術では、ロープは万が一の墜落時の命綱としての位置づけをしており、墜落を防止するものではなく、事故にならないまでも墜落することを前提とした技術ということができ、墜落時の墜落者の体への衝撃を軽減するために荷重による伸縮性のある材質のロープであるダイナミックロープを使っています。・・・・・・ ちなみにダイナミックロープは、ザイルとも呼ばれることがあります。 なお、ロープアクセス技術やSRT技術では、伸縮性の低いスタティックロープを使います。 したがって、ロープアクセス技術で使うロープをザイルと呼ぶのは誤用です。 ・・・・・・・ また、アルパインクライミング技術では、ロープアクセス技術で使うような荷重を架け替えたり分散させたりして何重にも安全策を講じる技術は使わないです。
同様に日本の建設現場の高所作業で使われている安全帯などをつかう技術もロープ(親綱)は、墜落時の命綱としての役割が大きいです。 余談ですが、日本の建設現場の高所作業で使うロープ(親綱)には伸縮性はほとんどなく、墜落時の体への衝撃は大きいはずです。
このようにロープアクセス技術は、技術自体は安全を最優先した非常に優れた技術といえます。 一方、あくまでも個人個人の高い安全意識によるところが大きいのは他のどの分野でも同じです。 また、安全を最優先したといえ、基本的で重大なミスを重ねた場合には事故は当然起こりえます。 安全意識の維持・向上は当然のこと、万全の安全管理体制の下で運用されるべき技術であることは間違いないです。
(株)ロッククライミング調査のきぃすとん
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